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例えば、同じ広さ、同じ形状の土地に家を建てる場合でも、
地域の環境や住居の並びなど、周辺の景観によって、
家の印象はまったく変わってくるもの。
だから私たちは、単に家を建てるだけではなく、
屋根の傾斜や庭の構造、柵の位置など、家と景観の調和……
伝統的な言葉で言う「屋敷構え」のことまでを視野に入れたご提案を行っています。
特にこだわっているのが、四季のうつろいを大切にした庭の風景です。
庭は、住む人のみならず、その場所を訪れるすべての人の心に潤いを与えてくれる場所。
花の咲く時期はもちろん、樹木や草木が最も映える位置や角度、
季節や土地の周辺環境との相性まで考えたご提案をしています。
また、植物は、季節を重ねるごとに姿を変えていくものです。
春、夏、秋、冬と一年を通じて楽しむだけでなく、
10年先、20年先、やがてこの家で暮らす人々が成長し、
新しい世代の人間がこの家で過ごす…
そこまで考えながら、いつの時期でも、
どの時代でも美しいと感じる景観をつくり上げていきます。
季節を感じる風景の中で織りなす日常は、
「あのときは、桜が満開だった」「銀杏が咲いている頃に…」などと、
思い出話も鮮やかに蘇らせてくれることでしょう。
その家に住む人が心から納得し、
何度季節を繰り返しても楽しめる景色をつくること。
それが私たちの大工、そして現代の家守の仕事でもあるのです。